過去のコラム

2013.4月のコラム
「ものはこび」の仕事


宮城県水産高等学校 教諭 高橋 昭二

 “40日間―”。この日数は大型タンカー(長さ約300m、幅約60m、高さ8階建てビルと同等)が日本を出港してペルシャ湾で原油を積み込み、日本に戻ってくるまでの日数です。

 私は教員になる前に、「航海士(船の運転手)」ではなく「機関士(船内のメカニック担当)」としてこの大型タンカーに乗って原油を日本に運び込む仕事をしていました。この大型タンカーですが、積み込める原油量は、約30万トン=約3500万リットルにもなり、なんと50リットルタンクの自家用車700万台(東北6県の全登録車両数で約500万台)を一隻のタンカーで満タンにすることができるのです!ですが“40日間”かけて運んできた原油は、日本ではおよそ「半日」で消費してしまいます。いかに日本が原油を必要とする国であるかが分かると思います。

 船は、原油を運ぶだけにとどまらず、他にも鉱石、木材などありとあらゆる資源や材料・素材そして製品を大量に輸送し、私たちの豊かで快適な暮らしを支えています。ですから、船が無ければ、あるいは航海士や機関士といった「船乗り」がいなければ、日本の経済活動が成り立たちません。具体的に言えば、原油が足りなくなりガソリンが一滴もない、食べものが手に入らない、テレビやゲーム機などの工業製品も作れない、とにかく現在の生活を維持できなくなるということです。私は、ダイナミックな仕事をしていくなかで“日本の経済を支えている”と肌で感じることがきました。もちろん、やりがいを持って仕事をすることができました。

 大量の貨物と船、両方の財産を預かっている乗組員は、財産を守り、安全かつ確実性が求められる大きな責任が課せられているため、その「報酬(給料)」が良いのも船乗りの魅力のひとつといえます。その人の地位(役職)や船の種類によって異なるので具体的には言えませんが、気になる方は参考までにhttp://www.senin-jobnet.org/kjsb/index.htmlにアクセスして下さい。

 「船乗り」になるためには、「海技士」という国家資格が必要です。自動車整備や電気工事、機械製作などを専門に学ぶ高校生は沢山いますが、船を専門に学ぶ高校は、全国でも43校しかありません。また、海運業界では、乗組員の年齢が高齢化の状態にあります。定年退職した人を延長雇用で船員をまかなっているのが現状で、この状態が長く続けられるはずもありません。

 このように、高い報酬をいただける船乗りではありますが全国的に不足しています。逆に言えば船乗りを志すことは“就職難”とは無縁ということです。海運業界は若く、“海技士”資格を持つ人材を必要としています。本校の「航海類型」、「マリンテクノ類型」に進む生徒には、“海技士”資格を取得するチャンスがあります。是非そのチャンスを活かしてみてはいかがでしょうか!?