先生のコラム

2015年度コラム

「 成 果 は 地 域 の た め に 」~ホヤコロッケ開発秘話ヒストリア~

宮城県水産高校 油谷弘毅

「 成 果 は 地 域 の た め に 」~ホヤコロッケ開発秘話ヒストリア~

 宮城県をはじめ三陸沿岸では古くからホヤを食べる食文化がありますが、我が国全で見ると、ホヤはほとんど食べられていません。世界でも、韓国、中国、フランス、チリなどごく限られた国でしか食べられていません。このように、ホヤは水産物としてはマイナーです。しかし、東日本大震災前までは国内(主に三陸と北海道)で実に年間約1万トンが生産されており、そのうちの8割を宮城県が生産していました。このうち国内で消費されるホヤは、たったの3割でした。残りの7割のほとんどが韓国に輸出されていました。

 震災により、宮城をはじめ三陸の漁業は壊滅的被害を受けましたが、徐々に復旧し、震災後に養殖が開始されたホヤが2014年、いよいよ出荷となりました。生産量も回復し、2015年には震災以前に戻ると予想されています。

 

 しかし、原発事故の風評被害により、韓国が事故の影響を心配し、いまだに宮城など一部の県の水産物の輸入を見合わせています。つまり、震災以前の生産量に戻ったとしても、これまで7割を輸出していたことを考えると、その販路のほとんどを失った状況にあると言えます。この状況には漁業者や関係者もほとほと困っています。

「 成 果 は 地 域 の た め に 」~ホヤコロッケ開発秘話ヒストリア~

 この問題を解決するべく、我が宮城県水産高校「調理研究部」が立ち上がりました。輸出がだめなら国内消費を拡大するしかない、「これまで食べられていない地域の方に、ホヤを知ってもらおう!」と開発プロジェクトが始まりました。ホヤは独特の風味が強く、好き嫌いがはっきりしており、刺身、蒸し、塩から・・・と手軽な食材とは言えませんし、若者が気軽に手を伸ばす感じでもありません。そこで、若い人をターゲットに、手軽に食べられるような製品の開発を目指しました。

「 成 果 は 地 域 の た め に 」~ホヤコロッケ開発秘話ヒストリア~

 揚げ物好きの若者ならクリームコロッケがウケると予想し、独特の風味は乳製品で和らげ、小麦粉よりも油の吸収が少ない米粉を利用してヘルシーに仕上げる、米粉パンも使う・・・など、アイデア満載の水産物と農産物のコラボで「ホヤクリームコロッケバーガー」が出来上がりました。

ホワイトソースが見事にホヤの風味を和らげ、ホヤ特有のさわやかな甘みが広がるコロッケバーガー。地元企業とのコラボ化も決定し、昨年度の全国産業教育フェアでは石巻の専門高校生が連携して販売しました。200個がわずか30分で完売するほど盛況でした。

 「地域の課題を専門学習の力で解決する」大きな一歩が踏み出しました。この成果を3月に東京海洋大学で開催された日本水産学会春季大会 高校生による研究発表の部で発表しました。他校の研究は、最先端のものが多く、そのレベルの高さに驚きましたが、本校調理研究部ではモットーである「活動は地域のため」ということを見失わず、自分の言葉でしっかり堂々と、丁寧に説明しました。

 この研究は今学会で最高賞である「金賞」を受賞することができました。この研究は、地域のために生徒が自ら試行錯誤し、アイデアを形にしたものであり、その姿勢を評価していただいたのだと考えています。部顧問としても、水産高校の教員としても素直に嬉しい受賞でした。これからも調理研究部は「地域の課題」を「水産高校生の目線で解決」し、それを「地域に還元」するために活動を続けます!