~「冷凍」について、ちょっとだけ考えてみようⅤ~
宮城県水産高等学校 教諭 若松英治
東京海洋大学では、食品冷凍を日本で唯一、専門的な学問として「水産冷凍学」を展開しています。そして、これに関する様々な問題に対し、多角的に研究を行っている食品冷凍学研究室があります。
同研究室では、冷凍することの基本原理はもちろん、そのメリットと実用例を把握した上で、いまだ未解決である問題(例えば、生野菜はなぜ冷凍すると萎れてしまうのか、こんにゃくを冷凍するとなぜ崩れてしまうのか、などといった問題)に対し、科学的に考え研究を進めています。さらに最近では、「冷解凍をしても味を落とさない」ための研究が注目を浴び、多くの家庭で大いに参考にされています。
それではここで、同研究室で提唱する「冷凍&解凍のアイデア」をいくつか紹介いたします。
(1)肉の冷解凍
冷凍すると肉が“パサパサ”になります。そういうときは、食品を空気に触れさせないように、きっちりラップで巻きます(1回でOK)。さらにその上をゆるめにラップで2重巻きにして空気の層をつくり、合計3重巻きにします。こうして空気をシャットアウトすることで、パサパサになるのを防ぐことができます。
解凍は、常温解凍すると肉から液体が出ておいしく仕上がらないので、熱したフライパンに、肉を“凍ったまま”入れ、大さじ1~2杯の水を入れて蒸し焼きにします。
(2)殻付き・むきエビ、アサリ・シジミなどの二枚貝
食材を生のまま密封容器に入れ、食材が浸るまで水を満たしてフタをして冷凍します(二枚貝の場合は、事前に砂抜きをする必要あり)。解凍時は、ボウルや深みのあるフライパン、鍋などに水を張り、そこに氷や保冷剤を入れて温度を保ちつつ冷凍された食材が入っている容器を入れて解凍します(このとき、容器はすぐに外れます)。
冷凍した食材をスープやみそ汁に入れる場合、凍った状態のまま沸騰した鍋へ入れてOKです。特に二枚貝は、解凍に時間がかかると貝が開かなくなってしまうので、この方法がおすすめです。
エビを炒め物に使いたい場合などは、氷水に浸したまま、時々スプーンなどで叩くと氷が食材から外れやすくなります。時間がかかっていい場合は、凍った容器をそのまま冷蔵庫に移動させて解凍します。
(3)下味をつける
冷凍中に調味料が浸透するので、肉はジューシーな味わいになります。食感は少し落ちるものの、きゅうりや大根など、薄切り野菜にも応用できます。
薄切り肉(豚、牛)200gに酒大さじ1、みりん小さじ2、しょうゆ小さじ2を入れて、冷凍袋の中で揉んで空気を出し、凍りやすいように平たくして冷凍庫に入れます。解凍時は保存袋ごと氷水に入れるか、冷蔵庫に移動させます。解凍後は生の場合と同じ方法で調理してOKです。
(4)衣をつけた肉、魚
衣があることで食材を乾燥から防ぎ、さらにラップで空気から遮断することで味が落ちるのを防ぐことができます。しかも、凍ったまま一気に調理できます。
アジフライやコロッケなどは1つずつラップで密閉した後、まとめてさらにふんわり2重巻きにするか冷凍用保存袋に入れて冷凍庫へ。ただし、凍った状態のまま揚げる際は油が飛び散りやすいので注意です。
(5)冷凍保存した肉でハンバーグ、肉じゃがを作る
挽き肉、薄切り肉は、ラップできっちりと包んだ後、冷凍用保存袋に入れて冷凍します。解凍は保存袋ごと氷水に入れるか、半日程度前から冷蔵庫に移します。解凍後は、生のときと同じ要領で調理ができます。
(6)ごはん
炊きたてか、保温中のアツアツの状態で密封容器へ入れます。このとき、まんべんなく入れ、フタのところにまで盛るか、上にラップをかぶせて空気に触れさせないようにします。1食分ずつラップで密封し、冷凍用保存袋に入れてもOKです。室温にまで下がったら、冷凍庫に入れます。
解凍時は、密封容器、冷凍用保存袋のまま、レンジであたためます(1食分2~3分が目安)。途中、箸などでほぐすと、ふっくら感が戻ります。
(7)コンビニおにぎり
パッケージのまま冷凍庫に入れます。解凍時は開ける手順の「1」のところだけ開けてレンジへ(1分程度)。のりとご飯がビニールで遮断されているため、のりがパリッとしたまま冷凍&解凍できます。
(8)パン
新しいうちに冷凍を。1切れずつアルミホイルでぴったりと包んで冷凍庫へ入れます。
解凍時は、アルミホイルで包んだ、凍った状態のまま、オーブントースターで5~10分焼きます。また、ジャムやバターを塗ったもの、サンドウィッチにしたものはラップで密封した上、冷凍用保存袋に入れて冷凍します。
解凍時は、レンジで1分くらいあたためた後、ラップを外して1分程度オーブントースターにかければホットサンドになります。
このように、同研究室では、個々の食材についての適切な冷凍・解凍法を模索して、たくさんの結果を紹介しています。ホームページやブログを覗いてみれば、今回紹介したもの以外のことも掲載されています。もちろん本校でも、フードビジネス類型において、冷解凍を学ぶことができます。
冷解凍は、まだまだ未解決の問題が山積みです。これを深く研究すれば、あなたも冷解凍の第一人者になれる!かもしれません…。
(冷凍について)完
参考:東京海洋大学「食品冷凍学研究室HP」