先生のコラム

1. 理科実験のススメ

投稿日時: 2018/07/10 システム管理者

宮城県水産高校 教諭 若松英治


 私は「情報無線研究部」の顧問をしています。情報無線研究と言えば、パソコンで携帯電話のアプリを開発しているんじゃないか?とか、無線通信をこよなく愛するマニアックな集団なんじゃないか?と思われがちですが、幅広いテーマのもとに活動しています。「あまり部活名に固執せず、様々な実験を通じ、その経験を基に“得た知識や技術を何かに応用できないか”を追求する」と言うコンセプトです。

理科実験のススメじゃあ何をしているのか?と言えば、“理科実験”をしています。そして、最終的には“ものづくり”をして“特許取得”までいけたら・・・と考えています。ここで皆さんにイメージしていただきたいのは、理科実験とものづくりが関連するかどうかです。両者は一見、関連性がなさそうに思われますが、実際はどうでしょうか?

 例えば、「氷水に塩をまぶすと水温を-20℃に下げられる」という物理現象があります。

水が凍り始める温度(凝固点)は0℃ですが、水は食塩水になっているので凝固点は低下します。この-20℃でも凍らない状況を“凝固点降下”と言い、この現象は、“融雪剤”に応用されています。雪に融雪剤(塩化ナトリウムや塩化カルシウム等)をまぶすと、空気中から熱を奪い、塩の結晶に接している雪は周囲より早く溶けます。雪が溶けると水になり、その水が凍ると路面が危険な状態になりますが、すでに水は塩が溶けて塩水になっているので、“凝固点が下がった状態”となり路面は凍結しません。

理科実験のススメ

このように、私たちの生活を便利で快適なものにしてくれる様々な製品は、過去の偉人たちによって発見された様々な物理現象から発展した産物と言えます。

 我が部でも、凝固点降下について実験してみました。ボウルの中に水と氷を入れ、塩をまぶすことで水温は-15℃程度まで下がっても水は凍りませんでした。一年生はこれを応用して“アイスをつくれないか”と考えました。早速、バニラアイスの材料を買い込んでアイスの原液づくりから挑戦しました。空缶にアイスの原液を入れ、しばらく放置してみましたが、なかなか固まりませんでした。なぜアイスの原液が固まらないか失敗の原因を考えてみました。原液の量を減らす、氷と塩の割

合を変える(理科実験のススメ塩の量を増やす)ことが出てきましたが、問題なのは「どうやって早く固めるか」です。そこで「缶を放置して冷やし続けるだけでは、効率が悪いのではではないか?」と考え、2リットルのペットボトル容器の底に氷、塩、水を敷き、その上に缶を置き、さらに氷、塩、水を投入して缶を全面的に冷やしつつ、さらにフリフリする、という作戦に変更しました。

  このフリフリ作戦によって5分で見事に原液が固まり、アイスクリームができました。しかし、同時にこれでいいのか?という疑問が生じました。なぜならアイスをつくる度に5分間もフリフリするのは、結構大変だからです。何か工夫すればもっと簡単にできるんじゃないか?と考えてみました。フリフリ作戦から一旦離れることにして、新たに作戦をたてました。

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 容器を缶から金属製ボウルに変えてみました。すると比較的すぐに外側から固まり、さらにかき混ぜてみたところ、ボウルに面したところからどんどん固まってきました。3分程度でアイスになりました。さらに「回転」させてみると2分でアイスになりました

 このとき、部屋を見渡すと“回転式モップ洗浄機”が目に入りました。「これを使えば楽に回転させられるんじゃないか?」と考えました。早速ボウルを置いてみるとミラクルフィット!

踏むだけで、手回しでは考えられないほどの高速回転が可能になりました。高速回転の結果、「簡単」かつ「大量」のアイスをつくることができました。さらに、この回転式モップ洗浄機を水の散乱を防ぎ、ボウルを固定するなど、よりアイスをつくり易いようにカスタマイズしてみました。こうして、手づくりアイスクリーム製造機「アイス・ツクレール」は完成しました!

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 この経験は、「物理現象を実験で実証しよう」→「実証できた物理現象を応用してアイスをつくろう」→「もっと効率良くアイスをつくれないか」→「考案した効率の良いシステムを応用して製品化しよう」という流れを生みました。

 この活動の成果を、昨年度の「全国産業教育フェア」で発表したところ、理科実験から“ものづくり”へと発展したところや、好奇心をもって活動しているところなどが評価され、「優秀創造力賞」をいただきました!

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 理科実験とは、「物理現象」を知ることにつながります。実験をすればその知識が身につきますし、その経験と知識がいつか「何かものづくりをしようとしたとき、研究していく中で壁に当たったとき」にそれを解決しうる突破口になりえるかもしれません。行き詰まっているときは、色々な知識が解決の糸口になることがよくあります。ですから、知識があるのとないのとでは、大きな差になります。その物理現象の作用を知識として持つことは、これまでになかった新しい何かを創りだし、特許につながる「発明」ができる可能性を持つことになると言っても過言ではありません。

  本校、情報無線研究部では、“理科実験”や“国家資格の講習会”、“発明を意識したものづくり”が行われています。本校情報無線研究部で色々な活動を楽しみながら、「自分自身の中に潜んでいる力」を追求してみませんか?