ブログ

2020年4月の記事一覧

令和2年度入学式における「校長式辞」

暖かな春の陽気に石巻の桜もきれいに花を咲かせる季節となりました。この良き日に新入生の皆さんを迎えるべく令和2年度宮城県水産高等学校の入学式を挙行できますことは,この上ない喜びであります。

ただいま入学を許可しました,海洋総合科98名,専攻科海洋技術科航海コース1名,同じく機関コース4名の新入生の皆さん,入学おめでとう。教職員一同,皆さんの入学を心より歓迎いたします。

本来であれば,体育館で行う入学式で,真新しい制服を身にまとった皆さんの入場を拍手で迎え,またその晴れ姿を保護者の方々に御覧頂くとともに,県下でも有数の歴史を誇る本校の伝統を支えていただいている多くの御来賓の方々からの祝福を受け,また,在校生による校訓唱和,校歌紹介により,皆さんの高校生としての第一歩を踏み出す機会とさせていただきたかったのですが,新型コロナウイルス感染症の拡大の中で,感染拡大防止のため,皆さんと保護者の方々を別室に迎えての入学式となりましたことは,大変残念に思っております。

保護者の皆さま本日は,お子様の御入学,誠におめでとうございます。保護者の方々には,お子様の晴れの日である入学式をこのような形で挙行させていただきましたことにお詫びを申し上げますとともに,何とぞ御理解いただきますようお願いいたします。

さて,本校,宮城県水産高等学校は,明治29年に牡鹿郡簡易水産学校として設立許可を受け,翌30年の開校以来,地元石巻,宮城県はもとより,日本の水産・海運産業を支える有能な人材を世に送り続け,今年度124年目を迎える,歴史と伝統を誇る学校であります。また,平成26年度の学科改編で,「採る・運ぶ」「育てる」「加工する」といった従来の水産教育に,「食・資源・環境」を総合的に捉えるとともに「調理」を加えた,新たな水産教育を展開する,次代の水産教育を目指す学校でもあり,まさに伝統と未来を融合した,本県の水産教育の拠点校であります。

「礼節を尊び師長に従うべし」「至誠を本とし廉恥を重んずべし」「忍耐を旨とし業務を励むべし」。これは本校の校訓であります。社会生活の秩序を保つために必要とされる行動を大切にし,師とする人や目上の人の言うことを聞きなさい。誠実に事に向かい心豊かで周りに迷惑をかけることを恥ずかしいと思う心を大切にしなさい。苦難なことにも堪え忍んで,仕事や実習に励みなさい。といった意味になります。

この校訓のもと,本校では,他校で見ることのできない多数の施設・設備を用い,様々な実習を通して,専門的な知識と技術を身に付けることができます。そして,航海士や機関士などの船の資格や潜水士,調理師など多くの資格取得が可能であります。在校生は,将来の目標を定めて,卒業後の進路実現に向け,前向きに学習に取り組み,そうした資格取得に挑戦しております。

新入生の皆さんにも,今日から3年間,専攻科の皆さんは2年間,先生方の指導を受けつつ,そうした資格取得等に挑戦していってくれることを期待しています。

さて,海洋総合科に入学した皆さんは,昨年6月の改正民法法により,「成人年齢引き下げ」いわゆる18歳成人としての影響を受ける最初の入学生であります。皆さんは三年生で迎える誕生日を境に民法上成人として扱われることになります。飲酒やたばこ,ギャンブルなどは別の法律で従来どおり20歳(はたち)からとされていますが,今までの生徒とは違い,皆さんは三年生の誕生日以降,保護者の方の同意無しに自らの判断により,様々な契約を結ぶ権利を得ることになります。もっとも,自由に決められるといった権利を得る代わりに,責任としてそのことへの義務を負わなければならなくなります。法を犯した際の責任や,契約により発生した義務は自らが負わなければならなくなるのです。

そうしたことから,皆さんにとって高校生活は大人に成長するための期間で有るとともに,大人としての責任を果たすことを実践していく期間,まさに「自立」のための期間になります。

「権利を主張するためには義務を果たさなければなりません」「自由を求めるなら責任を追わなければなりません」,そのことを高校生活の中で,自らに当てはめて行動できるようになることを期待しています。今日の入学式を,「自立」に向けて歩むことを決意する機会と考え,これからの高校生活を送って下さい。

保護者の皆様,本日よりお子様を,本校でお預かりすることとなりました。この宮城県水産高等学校で大きく成長し,卒業,修了時にはそれぞれの希望の進路へと進んでいただけるよう,教職員一同最善を尽くす所存でございますが,高校生を取り巻く社会の変化の激しい時代となっており,学校だけでは対応できない部分が多々あるのも現実であります。保護者の皆様におかれましては,学校との連携を密にしていただくことをお願いするとともに,今までどおり,あたたかく,時には毅然とした態度で見守っていただき,ともにお子様の成長をサポートしていただきますようお願いいたします。本校への御協力と御理解を賜りますよう,お願い申し上げます。

結びに,御多用の中,お出でいただいた保護者の皆様,御祝辞,激励を頂戴した多くの方々に感謝を申し上げ,式辞といたします。

 

 

令和2年4月8日   宮城県水産高等学校 校長 瀧田雅樹